異文化適応力の向上

異文化適応力の向上

2025年10月18日(土)、NPO法人ともくら主催・JICA基金活用事業として、「外国籍児童・生徒と接する教育関係者のためのセミナー(全3回)」 第3回が開催されました。

 

 

今回のテーマは 「異文化適応力の向上」。
講師には 西舘 崇 氏(共愛学園前橋国際大学教授) を迎え、教育現場で子どもたちと日々向き合う先生方や支援者の方々、約20人の参加者が学びを深めました。

セミナー報告:「異文化適応力の向上」」
本セミナーでは、講師の現場経験を通じた実践的な学びが共有されました。

今日のテーマと趣旨
今回のセミナーでは、学校や地域での異文化理解や多文化共生の現場において直面する課題に目を向け、参加者自身の課題意識を深めることを目的としました。単なる理論紹介ではなく、講師自身の経験や具体的な事例をもとに、「地域全体で異文化対応力を発揮するためにはどうすればよいか」を考える内容となりました。

 

 

異文化対応の現状と課題
群馬県内の調査によると、外国人住民の6〜7割は地域交流を希望している一方で、日本人住民のうち積極的に交流したいと答える割合は約1割にとどまります。この状況は過去10〜20年ほぼ変わっておらず、地域での交流意識のギャップが課題とされています。
また、学校で異文化教育や多文化共生を学んでも、地域社会や家庭がその学びを受け入れる環境でなければ十分に活かされません。異文化対応力は学校だけでなく、地域や社会全体で育む必要があり、持続可能な共生社会の構築につなげることが求められています。

 

 

実践的なエピソード
1. 地域掲示板の多言語化
地域掲示板を外国人住民も理解できるように改修する際、最初は一部高齢者の反対がありました。しかし「若い世代に社会を譲る」という合意形成を経て、地域全体で理解を得ることができました。
→ 地域の信頼関係が、異文化対応を可能にする土壌となることを示しています。
2. 少年野球チームの事例
来日直後のブラジル出身の少年が孤立していたところ、野球チームの監督が声をかけたことで、ルールやチームワークを学び、地域との関わりが生まれました。
→ 教育や支援は個人の努力だけでなく、地域社会の信頼関係や仕組みを活用することが重要です。

 

 

問題のフレーミング
講師は、現状と理想のギャップを「課題」と捉える視点の重要性を強調しました。単なる量的な差(例:数値や指標)だけでなく、質的な差(例:交流意識や社会参加の度合い)も課題として捉え、誰にとっての理想かを意識することで、解決策の方向性が明確になると説明されました。

参加者へのメッセージ
講師は、学校教育の学びを地域社会に活かすには、教育関係者自身が異文化理解力を高めることが不可欠であると述べました。地域全体で子どもたちや住民の多様性を尊重し、信頼関係や地域の仕組みを活かすことで、持続可能な多文化共生社会が実現できるというメッセージが参加者に伝えられました。

 

 

まとめ
本セミナーを通じ、参加者は「学校教育だけでなく、地域全体で異文化対応力を育むことの重要性」を理解し、具体的な地域での実践方法や課題意識を持ち帰る機会となりました。

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